2008年08月09日

「蟹工船・党生活者」小林多喜二






「蟹工船・党生活者」

小林多喜二(新潮文庫)

オホーツク海で操業する蟹工船は、国策の名のもとに乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。未組織の労働者たちは次第に団結し、ストライキを起こすが-『蟹工船』。
軍需工場での労働争議を、共産党員で地下生活を送る人物の視点から描いた『党生活者』。

プロレタリア文学としてあまりに有名な本書。授業で習って作品名は知ってはいても、どうも難しそうでとっつきにくそうで手が出なかった。
ところが最近、ワーキングプア、格差社会などが問題になる今の時代に合っていると話題になって結構売れているらしいと聞き、手に取ってみたら意外と読みやすかった。

『蟹工船』。オホーツク海で海軍の庇護のもと、時にはロシアの領海に侵入して蟹を獲り、その船で缶詰加工までする蟹工船・博光丸。船ではなく工船だというので航海法の適用を受けず、また船だからと工場法の適用も受けていない。そんな法の抜け道の中でのあまりに非人道的な労働。冬の海でのそれこそ命がけの働き、言語を絶するほどのひどい労働環境。彼らは人間としてすら扱われない。
そこまで極端な状況はさすがに現代ではないけれど、働けど働けどいつまでたっても貧しいというワーキングプア、どんなにあがいても状況が変わらないという閉塞感が現在の社会と通ずるということで、今また共感を呼んでいるのでしょう。
無学で日々の労働でせいいっぱいの労働者たちが次第に結束してストライキにまで及ぶその課程、そしてそれがもろくも崩れ去る様が躍動的でした。

『党生活者』こちらは『蟹工船』に比べるとどうも共感できず。戦時下の厳しい統制のもと、当時の最先端の考えであった(?)共産主義を信じて、状況を改善しようと努力し活動するのは良いのですが、そのためにひとりの女性をある意味犠牲にし、そしてそれをやむを得ないとする考えには憤りすら感じました。強い信念を貫こうとするあまり他の事に目が向かない未熟さというか。
現在の私の目線からするとちょっと芝居がかってすらいるように見えるその地下生活ぶりもどうも・・・。ただ、実際その当時は本当にそうだったのでしょうし、そう思うとその時代の不自然さが恐ろしいです。

文学の食べず嫌い(読まず嫌い)は良くないなと実感した一冊。もしかして今まで敬遠していた作品の中にも、読みやすいものがたくさんあるのかも。
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2008年08月07日

「ミニ荷風!」

86ccb7df.jpgやっぱり時期的にオリンピックの特集。
東京オリンピックって生まれる前のこと。なので特に感慨はなく、その関係の特集よりも日暮里あたりの記事の方が面白かった。
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2008年08月06日

「愛がいない部屋」石田衣良






「愛がいない部屋」

石田衣良(集英社文庫)

東京・神楽坂にそびえる高層マンション。誰もが憧れる高級マンションに住む、女性たちの少し哀しい物語10編。

都心の神楽坂に建つタワーマンションなんていわゆる高級物件。そこに住むのは当然経済的にも余裕のある、ある意味羨まれる人たちのはず。でもそこでの生活は本当に羨まれるものなのか。
結局どんな環境にあろうと、そこに幸せや愛を感じるかはその人の心次第なんですよね。どこまで何を手に入れても満たされない、何でも求めすぎる現在の人の心の空虚さが少し怖い。

それにしても石田さん、どうして女性の気持ちがこんなに分かるんでしょうか。見事に言い当てられすぎて、なんだか覗かれているみたい。

10編全てとても哀しく切ない短編ですが、哀しい中にもその先にはかすかに明るい光が射すように、再生の気配が垣間見えるものが多くて気持ちが癒されます。そこが石田さんの優しさかな。
好きな話が多いですが、中でもこれからマンションを買おうとする女性の「いばらの城」が特に共感できました。
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hiro25neko at 09:33|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)石田衣良 

2008年08月05日

「カラマーゾフの兄弟5 エピローグ別巻」ドストエフスキー






「カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻」

(光文社古典新訳文庫)

とうとう有罪の判決を受けたドミートリー。エピローグではその後の主人公達のその後がごくわずか描かれていました。その後といっても、判決が下ってまだ流刑地にも旅立つ前のこと。彼らのその後の生涯についてはどうなっていくのか全くわかりません。
そいういう意味ではちょっと消化不良な気もしますが、解説によるとこれに続く作品が描かれるはずだったのだとか。だとしたら納得です。

子供達という次の世代に世界を託すという意味のラストだと私は捉えたのですが、次の作品に続くというラストだったのですね。

大作をようやく読み終えた〜という充実感いっぱいです。
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2008年08月03日

2008年7月集計

少し遅くなりましたが、2008年7月に読んだ本です。

おやすみ、こわい夢を見ないように」角田光代
金閣寺」三島由紀夫
恋せども、愛せども」唯川恵
カラマーゾフの兄弟1」ドストエフスキー
カラマーゾフの兄弟2」ドストエフスキー
カラマーゾフの兄弟3」ドストエフスキー
カラマーゾフの兄弟4」ドストエフスキー

合計7冊でした。
今月は以前から気になっていた文学作品に挑戦月間になりました。
特に「カラマーゾフの兄弟」はそのボリュームから最後まで飽きずに読み切れるか心配だったのですが、もうあとは最後のエピローグを残すのみです。

私的今月のベストは「金閣寺」。三島由紀夫をたくさん読んでみたくなりました。
8月も先月からの読書熱は継続中なので、名作文学なども引き続き読んでみるつもりです。
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hiro25neko at 22:09|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)集計 

2008年08月02日

いたばしの花火

080802毎年見るいたばしの花火。
何しろ住んでいるところが近いので。

以前の住まいでは自宅ベランダから見えましたが、今のところはマンションが邪魔なので外に行かないといけません。
ちょっと出れば見えるのですが、どうせ外へ行くならもう少し近くへ行ってみようということで、新河岸川の橋までくまと三人で行ってみました。

携帯カメラなので小さく写ってますが、とても良く見えて綺麗でした。

くまは夜でもまだ暑かったのか、いつものお散歩より長めに歩いたので帰り道ですっかりばて気味に。
最後は抱っこして冷たい缶ジュースを体にあててあげながら帰ってきました。帰宅後は水シャワー。

すっかり夏を満喫した感じ。やっぱり花火って日本の夏ですねぇ。
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2008年08月01日

「カラマーゾフの兄弟4」ドストエフスキー






「カラマーゾフの兄弟 4」

ドストエフスキー(光文社古典新訳文庫)

やっと恋が成就した瞬間、ミーチャに破局が訪れた。勾留され裁判を待つ間、一度は旅立った二男のイワンも戻ってきていた。そのイワンの話で第4部の前半分を費やし、後半部分はいよいよ裁判で物語の佳境を迎えます。

ミーチャばかりでなくイワンも精神的に病んで、壊れていくのが怖かったです。ロシアの深い雪と凍るような寒さと相まって、その心の闇が際立ちます。やっぱり思想、精神って気候風土に大きく影響されると思う。もちろんそれ以前に彼ら兄弟の生い立ってきたその環境というのが一番大きいわけですが。

そして後半の裁判は圧巻でした。判事側、弁護士側ともにその弁論は私の感覚からするととても文学的なことを主張し合っている印象でしたが、当時の裁判ってそうなのでしょうか。そうした裁判制度もロシアでは始まったばかりのようでしたが。

ところで、著者のドストエフスキーはじめ登場人物達もみんな、農民やその他市民、ここではいわゆる「民衆」と呼ばれる人々とは一線を画した人たちだったんだなということを感じたのも面白かった。中学生くらいの少年が「自分は民衆を愛する」みたいな上から目線の話をしてるんです。それでいて彼らが社会主義を語っている場面もあったり、その辺の不条理さも興味深い。
私は歴史は好きですが、それはずっと古い時代の部分だし、特にロシアの歴史は全く分からない。ロシア革命に先立って農奴解放があったということも、この本の解説で理解したくらい。その後の革命はともかく、農奴解放や社会主義の台頭というのは、民衆の側からではなく上の階級から進んだことなのでしょうか?それがちょっと気にかかって。一度調べてみたいです。

判決が出てこの壮大な物語もあとはエピローグを残すのみ。どういう収束の仕方をするのか読むのが楽しみです。
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